再生可能エネルギー源の急増
英国のエネルギーシステムは、再生可能エネルギー源の大幅な増加という変革期を迎えています。電力ミックスに占める炭素ゼロ電力の割合は、2010年の20%未満に対して現在は50%を超えています。電力会社が国のネットゼロ目標に取り組んでいることから、この傾向は今後も続くことが予想されます。
BSIのエネルギー担当アソシエイト・ディレクターSebastian Van Dortが、最近の「エネルギートーク」ウェビナーで、BEAMAのデジタル担当ディレクターJohn Parsons氏と対談しました。BEAMAは、電気技術製品メーカーとエネルギーインフラ技術プロバイダーのための英国の業界団体です。
この対談で、Parsons氏は、未来の送電網の可能性について貴重な洞察を与えてくれました。主要な見解、成功のために不可欠なマイルストーン、潜在的障壁、イノベーションとデジタル化を推進する上で規格が果たす重要な役割を中心に対談の内容を要約しました。それでは詳しい内容に入りましょう。
Sebastian Van Dort: 今後、2030年と2050年までに完全な柔軟性を備える送電網を実現するために必要な重要なマイルストーンは何でしょうか。
John Parsons: 新系統の運用にあたっては多くの基本ルールを明確化する必要があり、多くの組織がこれらの側面を模索しています。例えば、エネルギーネットワーク協会(ENA)は、電力ネットワーク事業者(ESO)と配電システム事業者(DSO)の間の力学を検討するオープンネットワークプロジェクトに取り組んでいます。一つの重要な問題は、ESOが直接一般家庭と契約して柔軟性を提供すべきなのか、それとも常にDSOを経由すべきなのかです。
英国政府、ガス・電力市場局(OFGEM)、イノベートUKの委託で作成された2019年の報告書では、エネルギーデータの質が低く、不正確で、欠落していることが判明しました。貴重なデータの入手が制限されたり、困難だったりするケースが多くみられました。この報告書は、英国のエネルギーシステムを近代化し、ネットゼロ目標を達成するために、データとデジタル戦略の統合を実施することを提案しています。
サイバーセキュリティとシステムのレジリエンスもデータと関係しています。リモートコントロールやバランシングサービスの利用が増えたことから、ネットワーク事業者、発電事業者、エネルギーユーザーには、データが安全でセキュリティが守られること、ネットワークがサイバー攻撃から保護されることの保証が必要になるでしょう。
Sebastian Van Dort: 重要なイネーブラーとマイルストーンはたくさんあります。私たちが克服し、対処しなければならない障壁はありますか。
John Parsons: 新システムの開発を促進しつつ、イノベーションを阻害しないレベルの標準化を行う作業は、バランスの取り方が難しいと思われます。同時に、英国エネルギー市場の利害関係者にイノベーションを促す誘因を与えるような適切な市場モデルを開発することも必要です。
Sebastian Van Dort: スマート化された、低炭素で柔軟性の高い電力網への移行を支援する上で規格はどのような役割を果たすでしょうか。
John Parsons: 規格には2つの重要な役割があります。第一は、ベストプラクティスを広めることです。多くの新しい組織がイノベーションを起こしていますが、これらの組織はゼロからすべてを発明したいわけではありません。規格は、パートナーが堅牢で最新のテクノロジーを使用しているという保証を与えます。
もう一つの役割は相互運用性です。相互運用性は、顧客がプロバイダーを変えたり、テクノロジーを購入したりする際に移行を円滑化します。規格は、同じ仕事をする際に、いくつものプロセスやテクノロジーが存在しないことを保証します。
Sebastian Van Dort: AIはどのような役割を果たすでしょうか。
John Parsons: ネットワークの発達の速さは、コントロールルームのオペレーターが迅速に意思決定できる能力を超えようとしています。したがって、AIシステムがネットワークを運営するようになる可能性は高いでしょう。
ただし、運用システムにAIを使い、それがうまくいかなかった場合、ネットワークがダウンする可能性があることがリスクです。不測の事態を招くことなくこのテクノロジーを使用できるようにするためには、多くの作業が必要になるでしょう。
再生可能エネルギーと電力網の柔軟性向上
サステナビリティへの移行は希望を与えてくれる一方で課題もあります。英国のネットゼロ目標を達成するためには、再生可能エネルギーの統合を進め、電力網の柔軟性を高めることが必要です。送電網に占める再生可能エネルギーの割合が増加したことに伴い、間欠性に対応し、信頼できるエネルギー供給を確保することが極めて重要となります。
インフラ整備、政策調整、再生可能プロジェクトへの融資といった障壁を克服するためには、利害関係者間の協力が不可欠です。エネルギー配給をリアルタイムで監視し、最適化するための鍵を握るのはイノベーションとデジタル化です。
規格の導入は、進化するこのエネルギー環境において一貫性と安全、効率を保証します。送電網の変革は胸躍る出来事ですが、課題に効果的に対処し、持続可能な未来を実現するためには慎重な計画と協力が必要です。