自然災害が食品セクターのサプライチェーンのセキュリティとオペレーションに影響を与えている今、全世界の人々が気候変動の影響を感じています。サプライチェーンは、レジリエンスよりも効率を高めるように最適化されているため、気候は食品部門の最弱のリンクになるおそれがあります。
世界の食料システムは、人間活動に起因する温室効果ガス(GHG)排出の3分の1を占めますが、これは、食料組織にとっては政府を支援するための、また、社会にとっては重要な気候目標を達成するための強力な解決策を示すものでもあります。
干ばつや洪水は、避けることができない未来の一つになるかもしれません。しかし、正しい知識と備えがあれば、組織は事前に計画を立てて事業継続を維持し、解決策の一翼を担うことさえできるのです。
予測不可能な事象はサプライチェーンにどのような影響を与えるか
米国海洋大気庁(NOAA)の統計によると、1980年から2021年にかけて米国における気象・気候災害は年平均7.7件でしたが、2017年から2021年にかけては年平均17.8件に増加しました。
こうした極端な気候現象の増加は、次のようないくつかの問題を引き起こすおそれがあります。
消費者物価の上昇とリスクの増大
ハリケーンなどの災害は、食料の輸送やインフラに影響を与える可能性があります。また、干ばつのような乾燥状態は、農業の衰退や収穫量の減少を招きます。
このような収穫量の減少は、価格を上昇させ、その結果、商品が窃盗の標的になるおそれがあります。
その一例が、2022年のハリケーン「イアン」です。この時は、壊滅的な高潮と破壊的な風によりフロリダ中央部と北部の大部分で淡水洪水が起こり、キューバ全島が停電しました。ハリケーン「イアン」の死者150人にのぼり、被害額は1,120億ドルを超えました。
甚大な経済的損害と農業の損害
NOAAの記録によれば、2022年に被害額が10億ドルを超えた気象・気候災害は18件にのぼりました。同様に、2021年に東南アジア全域で発生した気象関連、水害関連の事象は、この地域で約356億米ドルの損害を与えたと推定されます。
その翌年には、パキスタンで歴史に残る規模の洪水が発生。約400万エーカーの農地が破壊または損傷の被害に遭い、環境に壊滅的影響が生じました。
気候目標の後退
2022年にロシアがウクライナに侵攻したとき、欧州の多くのスーパーマーケットは、輸出がほぼ不可能となったヒマワリ油に配給制限をかけなければなりませんでした。ヒマワリ油を使用するメーカーは急いで製法を変更しなければならず、パームオイルに頼るメーカーもありました。パームオイルは森林破壊に関係する商品です。
同じ年、中国の四川省は深刻な干ばつに見舞われ、エネルギー供給が大幅に制限されたため、当局は工場への電力供給を制限せざるを得ない状況に陥りました。その結果、中国は石炭依存を低減するという目標を後退させるとともに、さらなるリスクに備え、エネルギーの供給力を補うために、一転して石炭採掘能力を増強しました。
これらの状況は、自然災害が生産スケジュールに支障をきたした場合、サステナビリティへのコミットメントがいかに短期間のうちに後退するかを示しています。
将来に備えて組織ができること
気候変動と異常気象がサプライチェーンの安全保障を弱体化する中、組織は、次のような方法で事前に計画を立てることにより、備えを固めることができます。
早期に備えをスタート
可能な限り早い段階(新規のサプライヤーとの取引を開始する時点や、用地がまだ未整地の時点が理想的)で手順を組み込めば、将来的に大きなメリットが生じるでしょう。見落とされたシナリオを発見するための共同作業、演習、訓練を含めてもよいでしょう。また、最初の用地選定時に気象分析を確実に行うことも考えられます。
事業継続のための計画
中断や災害が発生した場合に、どのように業務を継続するかを考え抜いた計画こそが最善の計画です。主要な人員とその役割、バックアップサプライヤー、代替施設を計画に入れてください。
レジリエンスを優先する
重要なサプライヤーを特定し、必須の在庫を備蓄し、輸送の代替ルートを確立しましょう。リスクを正しく理解し、その深刻度を評価し、対応策を知るための有益な最新情報の入手は利益をもたらします。
気候変動は現実かもしれません。しかし、食品セクターに属する組織は解決策の一翼を担う機会を与えられています。十分な知識を持ち、計画を整備すれば、強い自信を持って未来に立ち向かうことができます。