BSI(英国規格協会)、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)を尊重する職場文化形成のためのガイドラインを発表
英国規格協会(The British Standards Institution、以下「BSI」)は、多様で包括的な職場文化の創造を通じて、人材に重きをおく組織形成を可能とする新たなガイドラインを発表しました。これには経営層がダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(以下「DEI」)推進に真摯に取り組む姿勢を示すことや人材採用に関するルールの調整などが含まれます。
BSI(英国規格協会)、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)を尊重する職場文化形成のためのガイドラインを発表
多様性のある組織は同業他社よりも多くの人材を獲得し、業績を向上させ、特にZ世代の間では多様性のある職場を望む傾向があると調査で示されています。経済産業省の報告書によると、統計的に女性取締役のいる企業は、いない企業に比べ、株式パフォーマンスが良く、リーマンショック等の厳しい環境変化に対しても強く、回復が早い傾向があります。またダイバーシティ経営を通じた多様性の受容によって得られた恩恵として、日本企業を含めた多くのグローバル企業が「人材の獲得」や「業績の向上」を挙げています(ダイバーシティ2.0 一歩先の競争戦略へ:
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/diversitykyousousenryaku.pdf )。
さらに株式会社RASHISAが実施した18歳~24歳(Z世代)のダイバーシティ&インクルージョン(以下「D&I」)と働き方に関する意識調査(2022年 Z世代のD&I意識調査:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000038292.html)によるとD&Iに積極的な企業に対して「働きたいと思う」「好感を持てる」と回答したのは94.6%で、大多数がポジティブな印象を抱くことが示されています。
今回BSIが発表した、職場におけるDEIについての行動規範(PAS 1948)は、DEIの実現に向けたガイドラインを求める組織の声に応えるもので、国際的なNPOであるAll-In Diversity Projectによって後援されています。PAS 1948は、効果的なDEIのフレームワークの開発と導入を検討している組織に向けた実用的かつ必要な要素を網羅したガイドラインで、あらゆる国のすべての業界の組織を対象としており、どのような職場にも適用できます。
PAS 1948は、それぞれの組織に適したDEIフレームワークの実装を支援することを目的としており、無償で入手できます。対象となる分野には、「思考の多様性」、「多様性の側面」、「異文化間能力」、「認知的多様性」などの概念の理解と実践が含まれています。また、「インクルーシブデザインの原則」をサービス、テクノロジー、ビジネスモデル、およびプロセスに組み込むとともに、人材の採用や定着のためのDEIなど、具体的な対策についても取り上げています。さらにDEIの原則に反する行動への対処法や仲間との相互関係を通じて社会的、文化的なマイノリティグループと関わり、支援する方法についても取り上げています。
その他の注力分野は以下の通りです。
- 適切なDEIの学習・育成ニーズを特定する
- 包括的なブランド、顧客エンゲージメント、職場文化を醸成する
- DEIの原則を社内の方針、慣行、プロセスに組み込む
- 効果的なDEI文化を創造し維持することの組織的メリットを確立する
- 達成可能な目標を設定し、進捗状況を測定する
BSIの健康、安全およびウェルビーイングのグローバル責任者であるKate Fieldは次のように述べています。
「人材に重きをおく多様で公平かつ包括的な企業文化は、個人、組織、社会に変革をもたらす力があります。組織全体でDEIを構築し維持するためには、リーダーがその意志を持ち、行動に移すことから始まります。
DEIを人材と組織の将来の重要な投資とみなすことは、カスタマーインサイト・エンゲージメントや業績向上、イノベーション創出などにつながる可能性がある最高の人材とスキルを引きつけて維持するといった、多大なメリットをもたらします。PAS 1948は、包括的で誰もが歓迎される職場を構築することで、人々がポジティブな影響を生み出すためのガイドラインを提供します。」
PAS 1948は、役員会のメンバーや組織のリーダーから、人事担当者、コミュニケーション、マーケティング、ブランディング、ITのチームに至るまで、DEIの意思決定に関わる人なら誰でも実践できるように設計されています。
PAS 1948はそれぞれの国や地域の、または国際的な雇用に関する法律や規制をカバーするものではなく、組織・団体、研究所、政府機関などが発行した規格や原則を含んでいます。これは、ISO 30415:2021「人的資源管理 - 多様性と包括性」、BS 76000:2015「人的資源 - 人々を評価する- マネジメントシステム 要件とガイダンス」、およびISO 45003「職場における精神的な安全衛生」などのフレームワークの実践的なガイドラインとして使用できます。
All-In Diversity Projectの共同設立者であるChristina Thakor-Rankinは次のように述べています。
「このPASは4つの原則に基づいています。インクルーシブは人事部だけではなく組織のひとりひとりの責任であること、すべての人がオフィスで働くわけではないこと、第4次産業革命が私たちの生活と働き方を変えつつあること、そしてインクルーシブな職場向けのビジネスケースが証明されたこと。これらによって焦点は「なぜやるのか」から「どうやるのか」に移りつつあります。
当初からの目的は、誰もがアクセスでき、世界中のあらゆるタイプ、規模、セクターの組織に適用できる文書を作成することでした。職場がオフィスである場合はもちろん、スタジオ、競技場、店舗、科学研究所、サファリパーク、路上、あるいは宇宙空間であっても同様に適用することが可能です。
このPASは原則をカバーしていますが、より重要なのは、実践的なガイドラインや提言、業務上のニーズに合わせて、各自に合った予算とペースで組織が職場におけるDEIの枠組みを構築したり、既存の枠組みを発展させたりすることを可能にする基本的なワークプレイスツールキットも含まれていることです。これは普遍的な規格であり、独立した文書として、あるいは他の国や国際的な規格とともに使用されるように設計されています。」
PAS 1948のステアリンググループは以下の組織で構成されています:
- Abounding Solutions
- All In Diversity (Sponsor and Technical Author)
- Allwyn
- Creative Treaty
- Diversio
- Diversity Trust
- Fair Play Talks
- Foster Diversity
- Inclusion Included
- Innovate UK
- Light & Wonder
- Oxford University Press
- Skills 4 UK
- Sytner Group
- The Certification Group
- Women on Boards
詳細はBSIのwebサイトをご覧ください。
URL: https://knowledge.bsigroup.com/products/diversity-equity-and-inclusion-in-the-workplace-code-of-practice/standard